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【データから見るタイ】A社 における人づくりの現状
 
【データから見るタイ】A社 における人づくりの現状
 
A社は自動車大型プラスティック部品の射出成形金型メーカーである。実質的にタイで型作を開始して 7 年が経過した。型作りは CAD/CAM、数値制御加工等のハイテクと 型仕上げに象徴される技能、匠の技と言われるローテク混合の仕事となっている。特にローテク部門は技の習得に時間が掛かり、何とか仕事がこなせるまでに 3 年、型作りの全容 を把握し、自力で展開出来るまでに 7~10 年の経験が必要とされている。型はマザーツー ルの最たるものであり、型で生産される数十万個の製品は、型の資質がコピーされ品質が 決定付けられる。寸分のミスも許されない仕事となっている。
 
型作りの仕事は多岐にわたり、CAD/CAM を駆使したデータ処理、設計、数値制御デー タ作成、NC 加工、放電加工から配管・配線、仕上げ、磨き、トライ成形に至る。各工程は 専門性と経験が必要とされている。これらの工程を 1 人で全て賄う事は不可能であり、複数人の共同作業か数部門にわたる チームワークとなる。原則的には同じ型を 2 度作る事が無く、前述の如く典型的な単品生産である。
個々に固有の仕様、要求を備えた大小雑多の型に対応し、途中の情報分断が即ミスに帰するため、綿密なチームワークと工程管理が求められている。組織力と緻密さが不可欠である。
少し前までは日本、米国、ドイツを主とした欧州で世界の型の大部分が作られていた。米国では型屋はドイツ人系の仕事と考えられていたので、結局のところ日本人、ドイツ が中心になって型が作られていた事になる。マイスター制度で代表される匠の技を尊重する文化と、何事も律儀なドイツ人気質や、細部に拘る日本文化が型作りに適合していた故 と考えられている。
タイにおける型作りを目指す“人作り”はこの事情を最大限考慮して研修基本策が立案された。のんびりでおおらか気質のタイ人社員に型作りを実践して貰う難儀の根底は、彼 らとは対極にある文化の伝承に似たとろである。
以上を考慮した A社 におけるタイ人材育成の基本は次の通りである。
(1)対極文化伝承には白紙から始めるべく、全て新卒者を採用する。 対極文化は多少過激な表現だが、タイ人にとって“細部にこだわり過ぎる”日本文化は異質である。しかし型作りはこの“こだわり”が重要であり、適当な仕事は許されな い。この日本文化の一端を根付かせる努力が型作りの成否を分けると判断し、素直に受け入れて貰える白紙の新卒者を集めスタートした。実のところ型産業が少ないタイで経 験者を得ることは難しく、新卒者を集めざるを得なかったのが実情だが、結果的にはこ の方針は成功したと確信している。何事も素直に吸収しようとするタイの若い人の気質に支えられ、研修は効果的に進行した。当初、“技術・技能は盗んで覚えろ”に近い日本的な研修で進めたが、タイ社員には馴染まず、その後、個々を対象にしたマンツーマンによる丁寧な研修に修正を余儀なくされた。この現象はタイに限らず、最近の日本でも同様ではないだろうか。
(2)現場経験、知識が不可避であり、学卒者も含め全て現場作業から始める。頭の中だ けの知識では型が作れない。現場で体験した知識を尊しとする。タイの学卒者は現場に出たがらず、手を汚すのを嫌うと聞いていた。しかし、現場で 体験した技術がないと、本物の型は作れない。材料の性質、部品の特性、加工方法、仕上げ工法等の生きた体験、技術が必要とされる。それ故、全ての社員に数年の現場作業 を義務付けた。最初はかなりの抵抗があり、現場作業を嫌った退職者も出たが、根気よく説得し、こ の方針を踏襲した。日本への派遣研修も現場体験者から選び、実践的な研修が可能とな った。外部のタイ人が見るところ、“A車では学卒技術者が現場仕事をしている”と一様に 驚きを示している。日本ではごく通常のことと思われるが、タイでは異常に映るようで ある。7 年経過した現在、古参のタイ人技術者が新学卒技術者の研修に際し、“自ら現場で手 を汚さないと型は覚えられない“と言い始めた。まさに我が意を得たりの思いである。 
(3)ローテクの伝承は時間を掛け、確実に進める。
日本においても技能の伝承は頭の痛い問題である。若い人達は変化に富んだ派手な仕事には興味を示すが、地味で永い忍耐が要る技能の習得は敬遠する。しかし、最後に 型の品質を決めるのは巧みの技である。東アジアの追い上げで日本の型業界も苦境に 立たされているが、辛うじて生き残っているのは、残念ながらハイテクの優位性でな く、“こだわり”とローテクパワーである。タイでの型作りも同様に、ローテクをどう育てるかが成否を決めると覚悟を決めて取 り組んでいる。タイでは特に学卒者のブレインが重要視され、現場技能の社会的評価が低いようであ る。日本では技術者と技能者の給与格差は少なく、優秀な技能者はそれなりに社会評価 は高いようである。蛇足ながら、日本では最近の行過ぎた競争至上主義経済下で、技能を担っている中小 企業が疲弊し、優れた技能者に十分な待遇が叶わず、重要な技能の伝承が難しくなって いると危惧されている。タイローカルの型屋を何社か見る機会があったが、長年操業しているにも関わらず型 品質が十分でないところが多いようである。機械設備・CAD/CAM が揃っており、優 秀な技術者が育っているのに、品質が上がらないのが悩みである。筆者の独断によれば、 主たる要因は現場技能者の資質と見受けられた。型技能者が一般労働者と同じ待遇で処 遇されており、コツコツと腕を磨き、苦労を重ねる努力が評価されず、退職等で技能が 伝承されていないのが原因と考える。A社では、優れた現場技能者は会社の貴重な財産と捉えている。技の習得者を優遇し、腰を据えて現場技能者の育成を図っている。現場 技能者の優遇は、タイの社会通念から違和感があるらしく、タイ人マネジャーや学卒者 から異論が続出した。型価値を決めるのは最後のローテクであり、優れた技能者を育て、頑張って貰うこと に型屋の成否が掛かっていると力説し同意を得ている。ちなみに、タイでは学歴による給料格差が大きく、学卒の初任給は同じ年齢の高卒者の倍以上が通例である。
(4)学歴、年齢、性別を問わず全ての社員に機会均等を保障し、実力に応ずる報酬制 度を心掛け、社員の研修意欲向上に取り組む。
ブレインが要求されるハイテクと、地道な努力が要求されるローテク両方がバラン ス良く要求される。半世紀前の型作りは職人技による仕事だった。この四半世紀で NC 加工、CAD/C が 実用化され、システム化が進んだが、職人技の要素が色濃く残っている。全ての段階 で人間の知力、集中力、汗の凝縮が求められる労働である。社員の資質、やる気が効 率・品質に直結し、社員全体のやる気が必要である。本気で仕事に取り組む社風作りを実現させるため、実力主義を確実に醸成させ、頑張った分は必ず報いられる体制作 りに懸命に取り組んでいる。最新鋭の設備、ソフトを整備しても優れた型は作れない。型作りは人的要素がはる かに重要な仕事である。全ての企業において“人作り”は重要だが、型作りでは人材の重要性は特に高く換 言すると本当に型作りは“人作り”である。
(5)タイ人によるタイ人社員の研修 日本政府の研修助成制度等を受け、日本での研修や現地駐在日本人スタッフが研修に当たっているが、内容が多岐にわたることから全て日本人スタッフが担当するのは 困難である。基本になるタイ人技術者・技能者を育て、タイ人によるタイ人社員研修 を図っている。仕事を進めながら OJT で研修生を育てるのは、その社員の功績と評価し、積極的に 展開している。この施策は十分な研修スタッフが育っていないことから緒についたばかりだが、確 実に制度化するよう努めている。試行段階だが、現場でタイ人がタイ人を教えるのは 当地では珍しいとされている。
(6)他の社員への働きかけ 社員個々のアウトプットは評価されるが、他の社員にはたらきかけ、グループ集団のアウトプット向上はより評価される社風醸成に努めた。 型作りはチームワークが重要なポイントである。このチームワーク力向上を図り更にタイ人による研修等への波及成果を狙っている。 知識・経験を占有し、個人的な優位を図る動きもあるが、社員全体が向上する効果はより大きく会社躍進の原動力として、この他の社員への働きかけを最高の仕事と定 義した。この試みは完全には定着していないが、着実に理解され始めた。日本人によるチームワーク力は世界で定評あるところであるが、型作りにもチームワークは不可避である。ここでも、日本文化の一端が貴重な指針となっている。
 (7)資格制度
上記人材育成基本策の検証を兼ねた資格制度を発足させた。5 段階ランクとし、各ランクに応じた手当てを設定している。給与は物価上昇率を加味した昇給と、このラ ンク手当ての両方で構成される方式である。資格制度は入社満 3 年以上の社員を対象とし、中間査定、最終査定による年 2 回の査定で決定される。査定は各部署の責任者で構成される資格審査委員会により実施し ている。社員の奮起を促すため、査定結果は原則公開としている。査定内容は、経験、型知 識、専門知識、実技力、応用力の 5 項目評価としている。更に別組織で、勤務態度、 協調性、貢献度等 5 項目による勤務評定を実施しているが、将来、資格制度と統合す る予定である。資格審査委員会は社員の命運を左右するだけに、審査過程の透明性、 公正の確保に努めている。社員の評価が現場に近い開かれた場で行われるため、日々の努力が正確に反映され るシステムとなるよう願っている。社員と会社の信頼感醸成がこの制度発足の目標で ある。資格制度が確実に定着した時点で、ランク手当てを大幅増額し、更に社員の奮起を 促す計画である。以上を念頭に、7 年間が経過した。当初の 2~3 年は遅々として進まず、研修担当日 本人社員はボヤキの連続で、辛抱を強要させられた。一時は、この調子で型が作れる 日が来るのかと疑心暗鬼に落ち込む場面もあった。日本国内でも全て新人を集めての スタートでは、同様の進展であったと想像出来るが、当時は焦りが焦りを呼び込んだ 始末で、異国での環境では“遅い”の思いが募るようだった。しかし、3 年以降急速な進展が見られた。思い返せば、白紙のタイ人社員が型の基 本を理解するのに 2~3 年掛かった故と判断される。分単位で動く日本と比べ、タイ人社員の動きは“歯痒い”と感じる場面もあり、必要以上の焦りとなった訳だが、日 本の“セッカチ”が異常と言い聞かせて乗り切った次第である。国民性で何事もテキパキとは行かないが、辛抱強く働きかければタイ人社員は確実 に進んだ。極論すれば“遅々として進む”だろうか。遅々とした進みであれ、確実に前進すれ ば大きな航跡を残すのは可能であり、最近のタイ人社員の実力は日本人と肩を並べる レベルに近かづいたと自負している。最近、日本の若い人達は途中で歩みを止める傾 向が強いようだが、A社の社員は遅くとも確実に前進すれば、早晩日本水準に追つく と期待している。前述の通り型は完璧性が求められる。細心の注意と愚直なまでのきめ細かさが必要 であり、工期を守り、チームワークを磨く等、正に日本文化の真髄と極似している。この DNA の伝承が今後も最大の課題と捉えている。
 
前述の内容と一部重複するが、7 年間の奮闘結果を総括するとタイ人気質は次の通 りである。 (1)仏教徒が多く、似通った環境で育った日本人には、異なる点もあるが、むしろ同じ ところが多く違和感が少ない。特に他の外国からタイに入った時の“ホット”する安 心感は有難く感じる。 
(2)タイの人は穏やかである。主張、表現も穏やかだが、芯があり、面子を重んじる。 日本流に怒鳴りちらす等は最悪の結果を招く。褒めるのは人前で、叱り・注意は個別が原則である。操業 3 年目頃に仮の職制を決め、都合があって一部の職制を外した事態があった。 本人に落度がなく、新しい組織のため本人にも説明した一時的な処置でしたが、家族、 周辺に面子が立たないと退職した事例があった。タイでは面子が大事だと思い知らさ れた。 
(3)のんびり大らかである。猛烈な競争社会で揉まれた日本人には、“苛立ち”を感じる場面が多くある。分単位で動く日本とは異なるが、多分日本が“せっかち”過ぎる のではと反省させられる。のんびり大らかはタイで生活する際の安心感を演出してい るようである。 
(4)素直で真面目。真剣に働きかければ素直に応じてくれる。仕事の取り組みも真面目 である。若干受身だが、丁寧に指示すれば確実にこなす。テキパキと進めるには慣れが必要である。一部の国で遭遇する変なプライドはない。筋が通れば OK である。
 (5)日本企業の進出は想像以上に多く、オーバプレゼンスと思えるレベルだが、親日感 が満ちている。先輩諸氏の懸命な努力の結果と感謝しているが、何かにつけて有難い ことである。 
(6)通貨危機、クーデター、その他の政変があったが、社会が揺らがない。安定した社会の国と思われる。企業運営に不安を感じる要素は少ない国である。
 (7)タイは東南アジアで急速に発展している国である。活気に満ちており、閉塞感に悩 まされている国から来ると、南国の太陽以上に明るく感じる。タイ人は南国特有の明るい人達であり、気楽に付き合えるのが有難い。 
(8)物価が安く、特に食料品の安さは相当である。日本の厚生年金で十分な生活が可能 な上、貯金が出来る等の報道がされているが、大きな誇張はなさそうである。
以上、良いことづくめのようだが、眉をひそめる問題も数多くある。しかし、基本的に 恵まれた点が多く、問題があっても大抵は笑って済ませる範囲であり、企業家にとって、 又駐在する日本人にとっても居心地の良い国となっている。
タイ駐在の日本人は年期明けの帰国に際し、会社を辞めてでもタイに居残る例が増えて いる。経営者にとっては問題だが、それほど居心地が良い証だろう。創業以来何度か、OVTA の助成を頂戴し、日本から専門家の指導を受け、金型技術の向 上、5S 等の作業環境の改善活動に取り組んだ。日本人駐在員の研修から、タイ人社員への 普及へと進めた。A社での人づくりにも大いに効果があったようである。例のごとく全てゆっくり進ん だため、専門家の指導期間中に十分な成果が達成出来なかったケースもあったが、専門家の帰国後も中断すること無く、指導通り進め実績を挙げている。指導期間が短いのが残念 だが、適当な間隔で継続して戴ければ効果も高いと期待している。
 
最後に、“微笑みの国”タイは人々が穏やかで、社会も安定しており更に親日国である。 国も着実に発展し、活力に満ちている。日本人にとっては少し暑いのが気になるが、世界に類を見ない楽園と感じる。この国でタイ人と一緒に仕事が出来るのは有難いことであり、我々の営みがそれなりに成果を上げタイに少しでも貢献出来ればと願っている次第である。
 
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